GRAM

2008/02/21

Royal Hunt // Collision Course...Paradox 2

Royal Huntの新作『Collision Course...Paradox 2』が発売された。発売前情報はこちら


単刀直入に言えば、傑作だ。


本作はその名前からもわかるとおり、名作と言われた『Paradox』の続編に当たる作品だ。オープニングの雨の中のイントロを聴けば、前作を知るファンは鳥肌すら立つことだろう。ただし、本作はところどころに『Paradox』を匂わせているものの、厳密な続編と言うよりはコンセプトを"引き継いだ"作品であり、『Paradox』を知らずとも成り立つ作品である。そもそもジャケットでは"Collision Course"としか記述されていない。『Paradox』はキリスト教に疑問を投げかける作品であったが、『Collision Course』はキリスト教とイスラム教の衝突を憂う内容と読むことができる。まさに「避けられない衝突」なわけだ。

本作の特徴は、シンフォニックでコンセプチュアルでアルバム全曲で一つの大曲のような作風にある。その構築美は流石としか言うことが出来ず、途中で再生を止めることすら躊躇してしまうような怒濤の展開である。音の作りに関しても、やや未来的だった『The Mission』とも、荒々しさを出した『Paper Blood』とも違う、緻密なまでの構成、ゴシックで薄暗い雰囲気(悪い意味ではない)のものとなっている。この音作り、この作風は、まさに『Paradox』前後の作品を彷彿とさせるものであり、原点回帰という意味で歓迎するファンも多いことだろう。


本作のハイライトは2曲目の「The First Rock」だろう。まるで『Paradox』の「Tearing Down The World」のように序章を歌い上げるこの曲は、圧倒的なまでの美しさと激しさを持った疾走曲だ。間奏からアウトロに掛けては、近年のRoyal Huntでは珍しいほど過剰に扇情し、これでもかと言うほど圧倒的な演奏力と歌唱力を聴かせてくれる。

また、「It's Over」と同じイントロで幕を開ける4曲目「Divide And Reign」も大きなインパクトを持った曲だ。タイトなドラムのリズムを活かした本作で最も激しい曲であり、続くパワーバラードの「High Noon At The Battlefield」を更に引き立てる役割を果たし、直後の疾走曲「The Clan」へと昂揚感を繋いでくれる。このように、このアルバムは楽曲が連続し互いを高めあう構成になっている。まさに過去のRoyal Huntの手法そのものであり、繰り返し繰り返し聴く度に発見をもたらす素晴らしい展開である。


本作の話題の中心にあるのは、『Paradox』の続編ということの他、John Westの代わりのヴォーカルとしてMark Boalsが加入したことなのは間違いない。Mark Boalsと言えばこの世界では凄腕(凄喉?)で知られたシンガーであり、人気の面でも抜きん出たものがあるシンガーだ。実力面は心配する余地がないが、Royal Huntでどのようにその声を活かしているのか気にしている人も多いのではないだろうか。

聴いてからの感想を言えば、圧巻だ。

彼はとにかく声域が広く、超音波のような高音からブルージーな低音まで巧みに表現している。その表現力を引き出しているAndersenの手腕も相変わらず見事だ。過去のRoyal Huntのヴォーカルと比べても、そしてロック界においても、間違いなくトップクラスの表現力をこの作品で見せている。某誌のAndersenのインタビューによれば「(Boalsは)無理そうなメロディも難なくこなしてしまう」らしく、もしかしたらAndersenのイメージを現実化できると言う点では過去最高のヴォーカルなのかも知れない。Westが抜けたことは正直ショックであるが、Boalsの声を聴くと、この作品、そして今後の作品も高いクオリティの作品が生まれることだろうと想像するに難くない。


このアルバムは、最初イマイチと思った人であっても繰り返し繰り返し聴いてもらいたい。このアルバムの音作りは実に緻密であり、一度聴いただけでは情報量が多すぎ、慌ただしく感じてしまうことだろう。それ故、疲れることもあるかも知れない。しかし、脳が音を分解できるようになるにつれて、このアルバムは素晴らしいものになっていく。それはある種、Devin TownsendやBlind Guardianの曲のようだ。

繰り返し聴くことに耐えるアルバムは、傑作だ。俺はそう思う。

2008/02/06

capsule // FLASH BACK

昨年末発売のcapsuleの最新作『FLASH BACK』について。
このアルバムに関して最初に言っておけば、capsuleファンであっても好き嫌いの分かれるアルバムだと思う。

1. construction
2. FLASH BACK
3. Eternity
4. You are the reason
5. Love Me
6. I'm Feeling You
7. MUSiXXX
8. Get down
9. Electric light Moon light

中田ヤスタカと言えばこのところは非常に注目されているアーティストで、PerfumeのプロデュースCOLTEMONIKHAというユニット、m-flo loves MINMIのリミックスなど、とにかく幅広く活動していることで知られている。その中でcapsuleはメインユニットだと言って間違いないだろう。

capsuleはやや実験的な音作りをするユニットであるとも言える。以前はピコピコサウンドにも近いキュートなテクノポップであったが、Sugarless GiRLではハードテクノ、トランスにも似た太いベースを多用した音作りを披露し、capsule rmxではクラブサウンドとも言うべきグルーヴ重視の昂揚感が高い音作りを行っている。


前置きが随分長くなったが、本作の音作りもその傾向から外れていない"爆音で聴くようなクラブサウンド"だ。加えて、テクノらしさ、繰り返しの妙も今作が最も強いように思う。それに加え、本作では"古臭さ"が顔を覗かせている。このアルバムを聴いていると80年代のテクノ、"ディスコ"といった単語を思い浮かべてしまう。これがタイトルの意味なのだろうか?とにかく、昔のアルバムが好きなファンには受け入れられないだろうなー なんて心配をしてしまう音楽だ。

このアルバムを聴いているとdaft punkを彷彿させることも多い。考えてみれば、共通点も多いのだ。ヴォーカルへの多量のエフェクト、パンク的なディストーション、メロディよりリフを重視する曲作り、音から漂う懐かしい感触。この音作りをするようになったのはここ数作なので、昔からのファンが苦手とするのも納得はいく。正直、このアルバムはメロディを重視しているとは言い難く、ポップが好きな人には寂しい作品である。キラーチューンといえる曲も無いと言って良いだろう。

このような理由から、昔からのファンでも苦手な人は苦手なアルバムなのだ。


ただ、このような音楽もライヴで聴けば印象が様変わりする。僕はこのアルバムのリリースパーティと称するライブに行ってきたが、そこで映えるのは、やはりこのアルバムのようなクラブサウンドなのだ。テクノパンク的なディストーションサウンドがフロアを揺らし、リスナを一気に昂揚させてしまう。これはポップな音楽ではなかなかできない芸当だ。大音量でこのアルバムを聴けば、脳髄を揺らす昂揚感を味わうことが出来る。それはグイグイとベースのグルーヴで引っ張るこのアルバムのような作りの音楽ならではの体験だ。

私見ではあるが、中田ヤスタカはそれぞれのユニットを差別化しているのだろうと考えている。ライヴ向きのクラブサウンドのcapsule、キュートなテクノポップのCOLTEMONICHA、歌を重視するPerfume、といった具合に。ただ、このような見解さえも次のアルバムで打ち壊してしまうような予感がするのが、capsuleの面白さだと思う。


正直に言えば、『L.D.K.』『FRUITS CLiPPER』が好きな人がこのアルバムを買ってもがっかりすると思う。このアルバムの音楽は、そういった方向のものではない。しかし、近年のcapsuleの作品や、テクノが好きな人にはお勧めしておきたい。また、中田ヤスタカが好きであるならば、世界観を広げるという意味で良いアルバムだ。

最後に、このアルバムを買って、求めていた音と違ったと感じた人に、繰り返し何度も聴くことをお勧めしておく。良いアルバムは、何度も聴くことに耐え、そして聴き込むほどに新発見をもたらしてくれる。そして、昔からのファンにはこのアルバムの中でも「Eternity」をお勧めしておく。この曲は今のcapsuleと昔のcapsuleの良さを併せ持つ一曲だ。