日本の若手実力派JazzバンドPE'Zと、オルタナティブフォークのsuzumokuのコラボユニット。先に言っておくが、この作品はミニアルバムながら傑作と呼べる出来だ。
1. ギャロップ (アニメ「BLEACH」EDテーマ)
2. 流星群 (マツモトキヨシ CM)
3. 密室
4. Nica's Dream
5. 盲者の旅路 (Re-constructed by pe'zmoku)
PE'Zに関してはもう言うまでもないだろう。Jazzだけではなく、ロックやラテンなど様々な音楽を取り込む独自のスタイルで人気を集めているインストゥルメンタル・アーティストだ。キーボードのヒイズミマサユ機は東京事変の初期メンバということでも有名だろう。
一方で、suzumokuというアーティストに関しては正直全く聞いたことがないことだろう。オフィシャルの情報によれば、ストリートで長年歌い続けた後に07年頃にデビューしたアーティストらしい。デビュー間もないこともあり、本当にマイナーなアーティストだと言えよう。
この2つのアーティストが生み出す音楽は、実に熱気に満ちている。
suzumokuの歌は、「巧い」歌い方というよりも「聴かせる」歌い方だ。殆ど地声のままで幅広い音域を出し、確かな発音で歌詞を伝えてくれる。この歌い方そのものでは万人の心を掴むに物足りなさを感じるのだが、PE'Zと組むことでその印象がガラリと変わる。
PE'Zの熱いパフォーマンスを背に歌う彼の声は、ライブのような激しい演奏にも負けずにリスナの胸に響き、更には周りの演奏を引き立てる役割を果たしている。スタジオ録音のアルバムのはずなのに、ライブのような一体感と勢いと熱さを感じる楽曲となっているのだ。
一度、「ギャロップ」「盲者の旅路」の2曲は聴いてもらいたい。素晴らしいメロディと圧倒的な演奏、聴かせる歌詞。理想的な音楽の形だ。
このユニットには本当に期待している。ミニアルバムだけでなく、フルアルバムも。そしてその次のアルバムも、と、もっともっと新作を聴きたくなる中毒性を持っている稀なアーティストだ。
pe'zmokuオフィシャルサイト
2008/07/15
pe'zmoku // ギャロップ
2008/05/11
UNCHAIN // rapture
購入から随分経ってしまったが、UNCHAINという新人のデビューアルバム『rapture』がなかなか良い。
1. Signs Of Spring
2. Let Me Be The One
3. Don't Need Your Love
4. Precious
5. Light Your Shadow
6. Mother Earth
7. Life Is Wonder
8. You Over You
9. Show Me Your Heught
10. Always Shining
11. Quarter
12. make it glow
13. Dear My Friend
14. Rapture
avexからデビューとなる彼らは、96年に京都で結成され、大阪中心でライブを繰り返してきたバンドらしい。『rapture』と名付けられたこのアルバムで繰り広げられる音楽はジャズを取り入れたロックであり、帯ではグルーヴロックなどと表現されている。そのネーミングの通り、彼らの音楽はベースとドラムのグルーブ感に溢れ、聴いていて非常に心地よい。全編英語で歌うのも潔く、日本人バンドでありながら、カフェで流れているBGMのようなお洒落さが漂っている。曲調も明るい曲が多く、試聴したときにはJAMIROQUAIをロックに移行したような印象を受け、ついつい買ってしまったのを記憶している。
このアルバムでの私のお気に入りは「Always Shining」だ。キャッチーなリフに疾走するベースとドラム、ファルセットを効果的に使うヴォーカルと、ポップスとしてもロックとしても優秀な一曲だ。個人的には、彼らにはしっとりした曲よりも、このような陽気で疾走感に満ちた音楽をどんどんやってもらいたい。全曲解説と試聴はこちらでできるので、一度聴いてみてもらいたい。
このアルバムで、私は彼らを非常に気に入ってしまった。しかし、デビューでここまで高いクオリティだと、2作目が不安になってしまうのも事実。次の作品でも高いクオリティを発揮して、実力が本物であることを示してもらいたい。
UNCHAIN オフィシャルサイト
2008/05/10
Story of the Year // The Black Swan
デビュー以来、圧倒的な演奏力と作曲能力で世界を席巻してきたStory of the Yearの3作目『The Black Swan』が発売された。今作は名門エピタフ・レコードからの発売ともあり、注目度の高いアルバムである。
1. Choose Your Fate
2. Wake Up
3. The Antidote
4. Tell Me
5. Angel In The Swamp
6. The Black Swan
7. Message To The World
8. Apathy Is A Deathwish
9. We're Not Gonna Make It
10. Cannonball
11. Terrified
12. The Pale Blue Dot
13. Welcome To Our New War
14. Never Let It Go
15. The Truth Shall Set Me Free
16. The Virus
17. Turn Up The Radio
18. Save One
本作の特徴は、プログレのような曲作りをしていることにあるだろう。ハードロック色を押し出しシンプルに構成された前作に比べると、本作は次々とリズムを変え、リフを変え、複雑な曲を構成している。1stで見せた叙情性も本作では戻っており、1stのファンには嬉しい曲調だろう。彼らの歌詞は元々社会風刺的な物が多く、メッセージ性の強い物が多い。それに加えて本作では1曲の中で様々な場面が繰り広げられるため、メッセージ性はこれまでよりずっと強い物となっている。純粋なロックには違いないが、音楽はより力強く崇高な物になっている。
したがって、本作は音楽としての質は過去最高と呼べるだろう。しかし、前作のようなわかりやすいスクリーモを聴きたい人間にとっては、このアルバムは複雑すぎると言わざるを得ない。
この変化は、良いことと悪いことのどちらで捉えるべきか難しい変化だ。私の場合、彼らの音楽で惚れ込んでいるのは2ndの"シンプルでテクニカルなハードロック"であり、ここまで複雑な音楽は求めていない。1曲リピートをしたくなるようなキャッチーな曲がないのはこのアルバムの欠点といえるだろう。しかし、このアルバムの「Choose Your Fate」「The Antidote」「The Black Swan」「Pale Blue Dot~Welcome to Our New War」といった曲を聴くと、複雑さが生み出すメッセージ性を強く感じ、惚れ惚れしてしまう。テクニックも本作の方が存分に発揮されているし、歌詞に惚れている人にはこのアルバムは素晴らしいと感じられる事だろう。
ともかく、SOTYにとって一段階踏み込んだアルバムである事は間違いない。私の場合、前作に比べてしまえばイマイチなアルバムであるのだが、純粋に本作のみを評価すれば素晴らしいアルバムである。これだけテクニカルで、強いメッセージを曲に込められるバンドも少ない。心から傑作と言えるアルバムを次回に期待してしまう。
Story of the Year オフィシャルサイト
2008/04/12
Bullet For My Valentine // Scream Aim Fire
発売から随分経ってしまったが、英国産のヘヴィメタルバンドBullet For My Valentineの2作目『Scream Aim Fire』について。彼らは日本にもサマソニで来ていたので、メタルバンドとは言えメジャーに近い存在だ。知っている人もいるんじゃないだろうか。
彼らの特徴はやはり、IRON MAIDENにも例えられるカッコいいリフにあるだろう。今やオールドスタイルとも言えるようなリフをツインギターが刻む彼らの音楽には、拳を突き上げたくなるような昂揚感が存在している。ツインギターの熱いリフ+スクリームを混ぜて歌うヴォーカルと言うスタイルは、このジャンルを聴かない人には勿論のこと、このジャンルを聴き慣れた人にとっても新鮮だろう。
本作は前作に比べるとキャッチーなメロディが増加しており、ヴォーカルラインも万人好みの物になっているように感じられる。特に「Hearts Burst Into Fire」「Deliver Us From Evil」は、完全なまでにキャッチーで万人向けな音楽だ。商業的な音楽になったという捉え方も出来るが、しかしこれは順当な進化だと言えよう。前回の"ギターはカッコいいけどサビがつまらない"という印象を払拭しており、安心して何度も聴けるような品質になった良作だ。無論、演奏に関しては相変わらず非常に高いレベルの物であり、文句を付ける部分もない。
個人的に本作のお気に入りは「Take It Out On Me」だ。グッと心を掴む"キラーリフ"で幕を開けるこの曲は、ヴァースからブリッジ、コーラス、どれをとってもキャッチーでありながら、非常にカッコいいギターサウンドが全編を貫いている。俺がBullet For My Valentineに惚れたのも、この曲のような反則的にカッコいいリフを聴いたからだった。この曲を聴いて俺同様に惚れてしまう人もいるんじゃないだろうか?
彼らの前作は激しすぎて万人にお勧めできなかったが、本作は安心して万人にお勧めが出来る。たった2作しか出していないバンドに使う言葉ではないが、これは彼らの最高傑作だ。"彼らがちょっと気になっているんだけど"って人には、このアルバムから入るのがお勧めだ。
余談であるが、このアルバムは現在(2008/4/12)なら特別価格で2000円程度で売っている。この機に買うのはお勧めだ。2000円以上に楽しめるアルバムだ。

