今更っちゃあ今更なんだが、鬼束ちひろ // LAS VEGAS について。
約5年ぶりの新作ってことで、待ちに待ってたファンも多いと思う。今回は小林武史がプロデューサと言うことで、様々に話題となっていた。どれだけプロデューサで変わるかが懸念だった。
で、その中身だが、1曲目ののっけからネガティブなことを言い出すあたりは「お、ちゃんと鬼束ちひろしてる」と安心した(笑
た だ、そういった印象を抱くのも一時的で、全体にはやはり鬼気迫る感じは薄れ、柔らかい印象を受けるアレンジを楽曲に施されているように感じられた。特にリ ズム隊の入る(鬼束的に)ポップな曲に関しては小林の影響が大きい。リズムと展開が非常にシンプル、悪く言ってしまえば単調で、迫力も緊張感も高揚感もな い展開である。ミスチルやサザンを聴いているような印象だった。
これは別に小林が嫌いなわけでもミスチルやサザンが嫌いなわけでもなく (むしろ好きだ)、俺が鬼束ちひろに求めているものと違うというただそれだけのこと。鬼束自身がやりたいことがあれならばそれはそれで良いし、新たなファ ンが気に入ればそれはそれで良いと思う。音楽性が変わるのはよくあることで、必ずしも悪いことではない。ただ、鬼束のこれまでの、「Little Beat Rifle」のようなポップな曲は好きだったので、ポップな曲が全部この方向になるなら残念だなと思うだけだ。
彼女自身の声の 張りも随分落ちたように思う。デビュー作くらいになった感じかな。前作『Sugar High』の圧倒的なパフォーマンスは見られない。まぁ、そりゃ休止期間があるから仕方ないんだけどね。それより、録音が好みではないなぁと。前作は完全 に息遣いが聞き取れ、ジャズの如くライヴ感のあるヴォーカルの録音だった。今回は息継ぎの音無しに、すぅっと発声されることが多い。基本的な録音としては 本作の方が正しいのかも知れないが、如何せん「熱唱」という印象がない音になってしまっている。残念だ。
と、これだけ言っておきながら、
ア ルバムの最終曲「everyhome」を聴くと、それまでの悪いところを全て帳消しにしてくれるような感動を得られた。これこそが求めてたものだ。相変わ らず録音/ミキシングは悪いが、ピアノとヴォーカルのみで高い緊張感を創り出し、リスナを鬼束ちひろの世界に引き込んでしまうのは流石といわざるを得な い。徐々にテンションを高めて行った末の4分50秒からの悲痛な叫び、そしてその後テンションをイントロに戻す展開は、こちらも息を呑むほどの迫力に満ち ていた。声は確かに以前より弱々しいが、だからこその魅力かもしれない。
というわけで、総じて不満はあるわけだが、そんなことより何より、復活してくれたことが最も嬉しい。独自の世界観を持ち、それを歌い上げられる彼女の音楽をこうして再び聴けることだけで、このアルバムは意味があるように思う。
2007/11/18
鬼束ちひろ // LAS VEGAS
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